甘々を書いてた筈が、気が付けばひーとくー兄弟になってたっていう……。
村壬生まで行き着くのか?
「紅葉、今日から新しい枕ね」
生活能力の無い紅葉の代わりに、この家の家事を一手に引き受けている兄の龍麻の言葉に、枕?と、頭に?を浮かべながら紅葉は頷いた。
「部屋に置いてあるからね。あ!!そうだ、必ずNOが上ね?」
意味不明な龍麻の言葉にも、根が素直な紅葉は頷く。
……もちろん、意味など判っていないが。
早くに両親を亡くし、兄弟二人になってしまった龍麻は紅葉を溺愛していた。
それこそ、目の中に入れても……ってぐらいに。掌中の珠のように。
その紅葉に悪い虫が付いたのは、つい一年ほど前の事だった。
紅葉を一人にするのを良しとしない龍麻は、遊んでいてもさっさと帰る事がしばしばだった。
それを「怪しい……」と、悪友達が押し掛けてきた日は、今でも思い出せる。人生最悪の日だった。
「帰れ」
玄関先、手土産片手に笑顔全開な自称親友に冷たく告げる。
「んなコト言わずにさー……折角、来たんだし?あ!!コレ土産」
そう言って、手渡された物に少し意識を持っていかれ、気付いたら部屋に押し入られていた。
その時の龍麻の言い分は。
『コレは!!本物?おおっ!!探していた幻の銘酒だ』
みたいな?
龍麻の悪友達は、良くも悪くも龍麻の性格を理解していた。
そりゃあもう、完璧に。
つまり。
?>>>>酒>女>悪友
彼の優先順位はこんなカンジだ。
その、何よりも優先している人物を一目見たかった彼等はこの酒の為に結構な金額と時間を使っていた。
それ程の酒ならばこそ、龍麻の気を惹くのに成功したと言うべきか?
部屋に入った瞬間、固まる悪友達。
彼等は、そこに、物凄く可愛い少年を見つけた。
白い肌とスラリと伸びた四肢。
瞳は何処か友人と同じモノを感じさせる紫黒色。
突然入って来た人物の気配に紅葉は顔を上げる。
リビングで読書をしていた紅葉は、集中していた事もあって、玄関先での遣り取りに気付いてなかった。
自宅で、更に龍麻と一緒に居る時、紅葉の警戒心は無いに等しい。
それは、龍麻への信用……信頼故の事だが。
「……兄さん?」
危険は感じられなかったが、この家の中にある見知らぬ他人の気配につい兄を呼ぶ。
一歩遅れて入って来た龍麻にホッとする。
が、この家に他人を入れるコトを嫌う龍麻にしては、悪くない機嫌に?がつのる。
「紅葉、安心して良い。コイツ等は俺の悪……友人だ」
紅葉に、安心させるように微笑み、さり気無く隠す。そして、悪友達をきつく睨んだ。
怒らせた!!と、慌てる友人達を救ったのは、龍麻の後ろに隠された人物だった。
「じゃあ、お客様?」
嬉しそうな声に気付いた悪友達の『勝った!!』と、言わんばかりの満面の笑みに思わず黄龍を放ちそうになった事は紅葉には内緒だ。
最早、名前を借りただけの別人。。